脂肪肝~肝臓に脂肪がついてると言われたら~

健康診断で”脂肪肝”と言われたことはないでしょうか?

近年、過栄養や肥満のために、成人男性の約30~40%、女性の10~20%に脂肪肝が認められます。
脂肪肝の原因や、治療に関して説明いたします。
肝臓の働きや肝機能障害についてはこちらをご覧下さい。

脂肪肝とは

脂肪肝とは、肝臓の細胞に主に中性脂肪からなる脂肪分が溜まっている状態です。
脂肪肝は大きく、飲酒が原因の 「アルコール性脂肪肝」 と、肥満や生活習慣病が原因の 「非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)」 に分けられます。
その他に薬剤や肝炎ウイルス、特殊な疾患(自己免疫性肝炎、甲状腺機能亢進症など)が原因の脂肪肝もあります。二次性脂肪肝といい、「非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)」には含まれません。

この非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)は、メタボリックシンドロームと関連した脂肪肝として近年注目されています。
非アルコール性脂肪肝は日本人男性の32.2~41%、女性の8,7~17.7%に合併していると報告されています。また肥満人口の増加に伴ってNAFLDの有病率も上昇していると考えられています。

NAFLDの中で、肝細胞の炎症が強く、肝硬変や肝臓癌のリスクが高いものを非アルコール性脂肪肝炎(NASH)と言います。具体的には「肝細胞の5%以上に脂肪蓄積があり、肝細胞障害及び炎症を伴うもの」と定義されています。

脂肪肝の検査は?

血液検査、超音波検査(腹部エコー)・CT検査などがあります。
血液検査では、肝臓の機能や、肝炎ウイルスや特殊な病気等の二次性脂肪肝の原因を調べます。腹部エコーやCTといった画像検査では肝臓への脂肪の沈着具合を評価します。原因が推定できない場合や、肝臓の強い炎症が疑われた場合は、肝臓の組織を採取して顕微鏡で調べる方法もあります(肝生検)。肝生検が必要と判断される場合は総合病院に紹介致します。

脂肪肝を放置すると?

脂肪肝を放置すること、一部の人は脂肪肝炎という肝臓に炎症が起こった状態になります。
脂肪肝炎の状態が長く続くことで肝硬変になり、肝臓の働きが大きく低下します。現在の薬では 肝硬変を元の正常な肝臓に戻すことはできません。 

さらに肝硬変からは 癌が出現するリスク があります。つまり、脂肪肝を長期間放置することは、将来肝臓癌を発症するリスクを放置することを意味します。

またNAFLDの場合は、肝臓の不具合だけでなく、 心筋梗塞や脳卒中といった心血管イベントのリスクが高くなります 。NAFLDは肥満や生活習慣病が関わっているためです。

脂肪肝自体には自覚症状は無いことが多いですが、脂肪肝を放置することで様々な合併症を引き起こす可能性があります。
脂肪肝と診断された方は、適切な治療介入と定期的な経過観察が大切です。

脂肪肝の治療は?

脂肪肝原因を取り除くことが重要です。

  • アルコール性脂肪肝:節酒・禁酒
  • 非アルコール性脂肪肝疾患:減量(食事療法、運動療法)、糖尿病・高血圧・糖尿病などの生活習慣病の治療
  • 2次性脂肪肝:肝炎ウイルスの治療、原因疾患の治療、原因薬剤の中止など

現時点で、脂肪肝を直接治療する薬はなく、原因を取り除くことが大切です
当クリニックでは、それぞれの患者さんに合わせた治療内容を提案させて頂きます。

食事内容は?

NAFLD/NASH診療ガイドラインでは

「カロリー制限による体重減少はNAFLD患者の肝機能、肝脂肪化を改善させる。エネルギー摂取量の適正化を優先し、栄養素接種比率では炭水化物もしくは脂質を制限することを提案する」

と記載されています。ガイドラインの背景となった論文の多くでは、脂質が制限されていました。
炭水化物や脂質の割合よりもカロリー制限が重要であるとする論文や、低炭水化物に不飽和脂肪酸を摂取することで脂肪肝が改善したという論文もあります。このように、食事療法に関して具体的な一定の見解があるわけではありませんが

 「炭水化物もしくは脂質の摂取を減らし、摂取カロリーを制限することで体重を減量すること」 

が大切だと考えられます。

 

運動療法は?

同ガイドラインでは

「運動による肝の組織学的変化は明らかになっていないが、運動療法単独でもNAFLDの患者の肝機能、肝脂肪化は改善するため、行うことを推奨する」

と記載されています。
運動療法に関しては下記のような報告があります。

  • 30~60分、週3~4回の有酸素運動を4~12週間行うことで脂肪肝が改善した。(文献)
  • 週に250分以上中等度から強度の有酸素運動を4~12週間行うことで脂肪肝が改善した。(文献)
  • レジスタンス運動は有酸素運動に比べて消費カロリーが少ないが脂肪肝が改善した。(文献)

また肥満が高度であればあるほど、運動療法による脂肪肝の改善が得られやすいと報告されています。
運動習慣は脂肪肝だけでなく、高血圧や糖尿病や脂質異常症といった生活習慣病にもメリットがあります。
少しずつでも構いませんので、運動習慣を長く続けることが大切です。

健診をきっかけに脂肪肝を指摘される方は珍しくありません。
飲酒や肥満、生活習慣病が原因なことが多いですが、中には特殊な病気が隠れている場合があります。
また脂肪肝を放置することで様々な合併症を引き起こすリスクもあるため、適切な治療と経過観察が大切です。

それぞれの患者さんに合わせた、検査や治療を提案させて頂きます。
大阪市平野区(JR平野駅)のやまおか内科まで、お気軽にご相談下さい。

文献)
日本消化器病学会編:NAFLD/NASHガイドライン2020
Sacks FM, et al, N Engl J Med 2009; 360: 859-873
Ryan MC, et al, J Hepatol 2013;59:138-143
Johnson NA, ea al, Hepatology 2009; 50: 1105-1112
Oh S, ea al, Hepatology 2015; 61: 1205-1215
Hashida R, et al, J Hepatol 2017; 66: 142-152

 

 

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