便潜血検査で大腸がん死亡は減る?37万人・14年追跡の最新研究

「毎年、便潜血検査を受ける意味はある?」「便を提出するだけで、本当に大腸がんによる死亡を減らせるの?」

2026年8月20日、医学誌JAMA Network Openに、便潜血検査を入口とした大腸がん検診について376,511人を最大14年間追跡した研究が発表されました。統計的な補正を行った結果、検診への招待は大腸がん死亡26%低下、実際の検診参加は43%低下と関連していました。ただし、この数字は「便潜血検査を1回受ければ死亡リスクが43%下がる」という意味ではありません。今回は研究結果を正しく読み解きながら、便潜血検査を受ける意味と、陽性だった場合に何をすべきかを解説します。

1. 37万人を最大14年間追跡した大規模研究

今回の研究は、スウェーデンのストックホルム・ゴットランド地域で実施された大腸がん検診プログラムを解析したものです。対象は376,511人で、主に60~69歳の男女が2008年から2021年まで最大14年間追跡されました。

検診では2年ごとの便潜血検査を行い、陽性となった場合には大腸カメラ(大腸内視鏡検査)を受ける仕組みが採用されていました。なお、この研究で用いられたのは主にグアヤック法便潜血検査(gFOBT)です。日本の大腸がん検診では一般的に、ヒトの血液により特異的に反応する免疫法便潜血検査(FIT)が利用されており、検査方法が完全に同じではない点には注意が必要です。

今回の研究のポイント

対象:376,511人
対象年齢:主に60~69歳
追跡期間:最大14年間
検診方法:便潜血検査 → 陽性なら大腸カメラ
評価項目:大腸がんによる死亡

便潜血検査から大腸カメラによる精密検査までの大腸がん検診の流れ

便潜血検査は、陽性となった方を大腸カメラによる精密検査につなげるためのスクリーニング検査です。

2. 検診への参加は大腸がん死亡43%低下と関連

大腸がん検診の効果を評価するときには、少し難しい問題があります。検診へ招待されても受けない人がいる一方で、本来の比較対象となった人が途中から検診を受ける場合もあるためです。このような影響が混ざると、検診そのものの効果が実際より小さく見える可能性があります。

今回の研究では、こうした影響を統計的に調整しました。その結果、大腸がん検診への招待では大腸がん死亡の相対リスクが0.74、つまり26%低下。さらに、実際に検診へ参加した場合について補正すると、相対リスク0.57、43%低下と推定されました。

数字をシンプルに整理すると

検診への招待:大腸がん死亡 26%低下と関連(RR 0.74、95%CI 0.58–0.94)
実際の検診参加:大腸がん死亡 43%低下と関連(RR 0.57、95%CI 0.40–0.80)

便潜血検査を用いた大腸がん検診と大腸がん死亡リスクの研究結果

研究では、検診への招待は26%、実際の参加は43%の大腸がん死亡低下と関連していました。

■ 「便潜血を受ければ43%死亡率が下がる」ではありません

ここは非常に重要です。今回の結果を「便潜血検査を1回受ければ、自分の大腸がん死亡リスクが43%下がる」と解釈することはできません。

研究はスウェーデンの集団検診プログラムを評価したものであり、日本人に同じ43%という数字をそのまま当てはめることはできません。また、これは便潜血検査だけの効果ではなく、定期的に検診を受け、陽性者が大腸カメラによる精密検査につながる一連の仕組みを評価した結果です。「低下した」と断定するより、観察研究として死亡低下と関連していたと理解するのが適切です。

3. 便潜血検査は「大腸がんを診断する検査」ではありません

便潜血検査は、便の中に目では分からないほど少量の血液が混じっていないかを調べる検査です。大腸がんや大腸ポリープでは病変の表面から出血することがあり、それを見つけることで、症状のない段階から精密検査が必要な方を絞り込みます。

一方、便潜血陽性=大腸がんではありません。痔や大腸炎などでも陽性になることがあります。反対に、大腸がんがあっても常に出血するとは限らないため、便潜血検査が陰性になる場合もあります。

便潜血検査の役割

便潜血検査は、大腸がんを確定診断する検査ではありません。症状のない多くの人の中から、大腸がんや大腸ポリープの可能性がある人を見つける「スクリーニング検査」です。そのため、陰性でも腹痛・血便・便通の変化などの症状が続く場合には、検診結果とは別に医療機関への相談が必要です。

4. 本当に大切なのは「陽性になった後」

便潜血検査は、提出して終わりではありません。陽性となった場合に、大腸カメラによる精密検査につなげることが非常に重要です。

2026年3月には、同じスウェーデンの検診プログラムで便潜血陽性となった14,873人を解析した別の研究もJAMA Network Openに発表されています。この研究では、便潜血陽性後に推奨された大腸カメラを受けなかった人は、比較対象となった一般集団より大腸がんの発症が約4.2倍でした。

もちろん、「大腸カメラを受けなかったこと自体が、がんを4.2倍に増やした」という意味ではありません。もともと便潜血陽性者には大腸がんが存在する可能性が高い人が含まれています。つまり重要なのは、陽性というサインが出ているのに精密検査を受けなければ、がんを発見する機会を逃してしまう可能性があるということです。

便潜血検査が2回のうち1回でも陽性なら大腸カメラによる精密検査が必要

2日法の便潜血検査では、2回のうち1回だけでも陽性であれば精密検査の対象です。

■ 「2回のうち1回だけ陽性」でも精密検査が必要

日本では2日分の便を採取する方法が一般的ですが、1回でも陽性であれば便潜血陽性として精密検査の対象です。「痔があるから」「1回だけだから」「症状がないから」という理由だけで再度便潜血検査を行い、陰性だったため終了することはおすすめできません。

便潜血陽性について詳しく知りたい方は、便潜血陽性と言われた方へもご覧ください。

5. 40歳を過ぎたら、症状がなくても定期的な検診を

大腸がんは、早期にはほとんど症状がないことがあります。そのため、血便や腹痛、便が細くなるといった症状が出てから検査を受けるだけではなく、症状がない段階から定期的に検診を受けることが大切です。

日本では厚生労働省の指針に基づき、40歳以上を対象として年1回の便潜血検査による大腸がん検診が推奨されています。今回の研究からも、「便潜血検査を定期的に受ける → 陽性なら放置しない → 大腸カメラによる精密検査を受ける」という流れの重要性があらためて示されたと考えられます。

6. よくある質問

Q便潜血が1回だけ陽性でした。大腸カメラは必要ですか?

A

はい。2日法で1回だけ陽性の場合でも精密検査の対象です。出血は毎日続くとは限らないため、もう一度便潜血検査をして陰性になったとしても、大腸の病変を否定することはできません。
Q痔があるので、その血だと思います。それでも検査が必要ですか?

A

痔からの出血で陽性になることはありますが、痔があることと大腸ポリープや大腸がんがないことは別問題です。「痔の血だろう」と自己判断せず、大腸カメラで大腸内を確認することが大切です。
Q去年の便潜血検査が陰性なら、今年は受けなくてもいいですか?

A

便潜血検査は「その時点で便に血液が混じっているか」を調べる検査であり、陰性が将来の大腸がんを保証するものではありません。日本では40歳以上の方に年1回の大腸がん検診が推奨されています。

7. 平野区で便潜血陽性を指摘された方へ

便潜血陽性だからといって、大腸がんが確定したわけではありません。しかし一方で、便潜血陽性は大腸の中を詳しく調べる大切なきっかけです。

「2回のうち1回だけだから」「痔があるから」「何も症状がないから」と放置せず、一度ご相談ください。当院では大阪市平野区を中心に、東住吉区・生野区などからも便潜血陽性後の精密検査や大腸カメラについてご相談いただいています。

大腸カメラについては、当院の大腸カメラ(大腸内視鏡検査)のページでも詳しくご案内しています。

8. 参考文献

1. Blom J, Nyström L, Jonsson H. Fecal Occult Blood Screening Outcomes Adjusted for Contamination Bias and Nonadherence. JAMA Network Open. 2026;9(8):e2629856. Published August 20, 2026. doi:10.1001/jamanetworkopen.2026.29856.

2. Heyman H, Saraste D, Jonsson H, Blom J. Colorectal Cancer Risk With Negative Colonoscopy or Nonadherence After Positive FOBT Screening. JAMA Network Open. 2026;9(3):e262404. Published March 19, 2026. doi:10.1001/jamanetworkopen.2026.2404.

3. 厚生労働省「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」:大腸がん検診は40歳以上を対象に、問診および便潜血検査を年1回実施。

便潜血陽性を指摘された方は、そのまま放置せずご相談ください。
大阪市平野区・JR平野駅徒歩9分。東住吉区・生野区からもアクセスしやすいクリニックです。

> 便潜血陽性の精密検査について
24時間受付:WEB予約はこちら

やまおか内科クリニック 院長 山岡祥

この記事を書いた人

やまおか内科クリニック
院長 山岡 祥

日本内科学会認定 総合内科専門医

消化器病学会専門医

消化器内視鏡学会専門医

大阪大学医学部卒業。日本内科学会 総合内科専門医、日本消化器病学会 専門医、日本消化器内視鏡学会 専門医として、大阪市平野区で消化器内科・生活習慣病を中心とした内科診療を行っています。胃カメラ・大腸カメラなどの消化器内視鏡診療にも力を入れています。

医学論文や診療ガイドラインなどの医学的根拠をもとに、患者さんが日常の健康管理や受診の判断に活かせるよう、専門的な内容をできるだけ分かりやすく解説しています。

院長プロフィール・経歴を見る >

関連記事

  1. 気管支喘息

  2. 糖尿病における食事・運動療法について

  3. 新型コロナワクチンについて

  4. ドクターズファイルさんに取材して頂きました

  5. インフルエンザの検査も可能です

  6. 新型コロナウイルスの経口薬「パクスロビド」ファイザー

PAGE TOP