肝機能障害~肝臓の数値が高いと言われたら?~

肝臓は生きていく上で重要な働きを担っている臓器です。健診で肝臓の数値が高いと言われたことはないでしょうか?
肝臓の数値が高い状態を「肝機能障害」と言います。肝機能障害の原因は様々ですが、中には早期発見、早期治療が必要な病気もあります。また肝機能障害を放置することで様々な合併症を引き起こす可能性もあるため、肝機能障害が見つかった場合は精密検査や、定期的な経過観察が必要です。
ここでは肝臓の働きから、肝機能障害の原因・治療について解説致します。

肝臓の働き

肝臓には大きく3つの働きがあります。
「栄養の貯蓄と、たんぱく質の合成」「解毒作用」「消化液(胆汁)の生成と分泌」の3つです。

「栄養の貯蓄と、たんぱく質・アミノ酸の生成」

私たちは生命維持に必要なエネルギーを確保するために食事をします。摂取した食事は胃腸で消化された後に体内に吸収されます。体内に吸収された栄養素の大部分は肝臓に運ばれ、貯蓄されます。貯蓄された栄養素は必要に応じて分解され、エネルギーとして消費されたり、生命維持に必要なたんぱく質やアミノ酸に変換されます。肝臓の働きが低下すると、栄養不足になり様々な合併症を引き起こしやすくなります。

「解毒作用」

様々な活動により体内には老廃物が発生しますが、肝臓にはそれらの老廃物を解毒する働きがあります。解毒作用が低下すると体内に老廃物が蓄積します。特に脳に障害を引き起こし意識が朦朧とすることがあります。

「消化液(胆汁)の生成と分泌」

摂取した食事を栄養素として吸収するためには”消化”が必要です。肝臓は”消化”に必要な”胆汁”という消化液を生成し、分泌しています。胆汁は主に脂肪やたんぱく質を消化するために必要な消化液です。胆汁には”ビリルビン”と言われる黄色い色素が含まれており、便が茶色なのはビリルビンの影響です。肝臓の機能が低下し胆汁が分泌されなくなると、消化不良を引き起こし、下痢や栄養不足に陥る可能性があります。

他にも細かい働きは沢山ありますが、肝臓は生きていく上で必要な働きを担っている重要な臓器です。
肝臓の働きが低下することは、「栄養の貯蓄と、たんぱく質の合成」「解毒作用」「消化液の生成と分泌」が正常に機能しないことを意味します。

肝機能障害とその原因

肝機能障害は健診(特定健診や企業の定期健診など)で発見されることの多い検査異常です。
健診で測定される項目は主に「AST(GOT)」「ALT(GPT)」「γGTP」になります。診療所や病院ではその他に「ALP」「ビリルビン」といった項目も検査されることがあります。

肝臓の内部には、肝臓の機能の中心的な役割を果たす「肝細胞」と、胆汁の通り道である「胆管細胞」があります。AST、ALTはいずれもトランスアミナーゼと呼ばれ、アミノ酸の生成に必要な酵素です。AST・ALTは主に肝細胞に存在しています(ASTは心筋や筋肉など他の臓器にも存在しています)。γGTPもアミノ酸生成に必要な酵素ですが、主に胆管細胞に存在しています。

何らかの原因で肝細胞に障害が起こるとAST・ALTが上昇し、胆管細胞に障害起こることでγGTPが上昇します。肝臓に異常がある場合は、障害が起こった場所に応じて「AST(GOT)」「ALT(GPT)」「γGTP」が上昇します。

肝機能障害の原因

肝機能障害の原因は様々です。

-AST・ALTの上昇

  • 脂肪肝
  • アルコール性(飲酒)
  • ウイルス性(C型肝炎やB型肝炎など)
  • 薬剤性(処方薬やサプリメント、漢方薬など)
  • 特殊な疾患(自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎、原発性硬化性胆管炎など)
  • 閉塞性黄疸

この中で最も多いのが脂肪肝と言われています。原因不明の肝機能障害患者の肝細胞を調べた研究では、肝機能障害の患者うち68~84%が脂肪肝であったと報告されています(1)(2)

ASTは肝臓だけでなく、筋肉や心臓の細胞にも含まれており、ASTの数値だけが高い場合は肝臓以外の病気(心筋梗塞など)も疑う必要があります。

-γGTPの上昇

γGTPはアルコール摂取(飲酒)で上昇することが多いため、飲酒習慣がありγGTPが異常高値の場合はアルコールによる肝機能障害の可能性が高くなります。また精神科で使用される薬剤で上昇したり、胆汁の流れが悪くなる閉塞性黄疸でも上昇することがあります。

どのような検査を行うか

健診などで肝機能障害が指摘された場合は、その原因を特定する必要があります。主な検査は血液検査、画像検査(超音波検査、CT、MRI)です。
血液検査では「ALP」や「ビリルビン」「アルブミン」といった肝機能の指標となる他の検査を追加します。またウイルス性肝炎や特殊な疾患(自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎、原発性硬化性胆管炎など)は血液検査で特定できる可能性があります。

さらに必要に応じで画像検査を行い、脂肪肝の程度や閉塞性黄疸の有無といった肝臓の状態を評価します。画像検査の中で、放射線被ばくの可能性がなく、最も手軽に受けていただける検査が超音波検査です。
これらの検査を組み合わせることで肝機能障害の原因を特定します。原因が特定できない場合や確定診断に組織診断が必要な場合は、肝臓の細胞を採取することもあります(肝生検)。

治療について

なぜ肝機能障害を放置してはいけないのでしょうか。
肝機能障害は肝細胞や胆管細胞に障害が起こり、上述した働き(「栄養の貯蓄と、たんぱく質の合成」「解毒作用」「消化液(胆汁)の生成と分泌」)が脅かされている状態です。肝機能障害の初期では自覚症状がないことが多いですが、肝機能障害が重度になった場合は倦怠感や黄疸といった症状が出現します。

さらに長期間肝機能障害が放置することで、肝機能が低下し「肝硬変」という状態になることがあります。肝硬変は、肝臓の機能が低下するだけでなく、肝臓癌の原因になります。肝硬変になると、 元の正常な肝臓に戻ることはありません 。肝硬変への進行を食い止めることが重要であり、肝機能障害が発覚した時点で適切な治療やフォローアップが必要です。

基本的に肝臓の数値を良くする薬は現状ありません。
肝機能障害に対する治療は、その原因に対する治療が重要になります。

①脂肪肝・アルコール性肝障害

健診で肝機能障害が指摘されるほとんどの方がこのタイプです。
飲酒や肥満に伴う脂肪肝が原因の場合は禁酒や生活習慣の改善、減量が治療の中心になります。また脂肪肝がある場合は脂質異常症(コレステロールが高い)糖尿病等を合併していることもあり、それらの検査や治療も必要です。

②ウイルス性肝炎

ウイルス感染が原因で肝機能障害を引き起こすことがあります。
肝障害を引き起こすウイルスは主にA型、B型、C型、E型に分けられます。

それぞれの特徴は以下の通りです。

A型肝炎、E型肝炎ウイルス A型は生牡蠣、E型はイノシシ肉で感染します。一時的に肝機能障害がでますが安静にすることで改善します。
B型肝炎ウイルス 出産時の母子感染、性交渉、医療現場での針刺し事故などの感染経路があります。一時的に肝障害が起こる急性肝炎と、生涯持続する慢性肝炎があります。必要に応じて抗ウイルス薬(核酸アナログ)の内服が必要です。

B型肝炎にはワクチンがあり、医療従事者では摂取が推奨されています。

C型肝炎ウイルス 過去に輸血や、集団予防接種で感染することが多かったタイプです。2010年頃から抗ウイルス薬が登場しており、ウイルスの排除が可能になっています。

③特殊な疾患(自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎、原発性硬化性胆管炎など)

診断には肝臓の組織診断が必要な場合が多いです。
それぞれの疾患に応じて、ステロイドやウルソデオキシコール酸といった薬を内服することがあります。

④閉塞性黄疸

胆管の流れが悪くなっているタイプの肝障害です。肝臓で生成された胆汁が腸管へ分泌されないため、肝臓内や全身に胆汁が溢れてしまいます。この状態を「黄疸」と言います。偶然血液検査で発見される場合や、体中が黄色くなることがきっかけで病院受診される方もおられます。
胆石、胆管癌、膵臓癌などが原因となることが多く、原因となっている疾患の治療が必要です。特に胆管癌や膵臓癌は早期発見、早期治療が重要です。またうっ滞している胆汁に細菌感染を起こすと「胆管炎」を引き起こします。胆管炎は緊急治療が必要になることが多く、重症化すると命に関わる状態になり得ます。胆管炎に特徴的な症状として発熱・腹痛・黄疸があり、これらの症状がある場合はお早めに医療機器を受診してください。

最後に

肝臓は生きていく上で大切な役割を担っている臓器です。肝機能障害を放置することで、肝硬変や肝臓癌といった合併症を引き起こすこともあります。肝障害を引き起こす疾患は様々であり、中には早期発見早期治療が必要不可欠なものもあります。
ほかの生活習慣病も合併していることも多いため、健診で異常を指摘された方は一度お近くの内科医師にご相談下さい。

文献
(1) Findings on liver biopsy to investigate abnormal liver function tests in the absence of diagnostic serology. J Hepatol. 2001;35(2):195-9
(2) Prospective evaluation of unexplained chronic liver transaminase abnormalities in asymptomatic and symptomatic patients. Am J Gastroenterol. 1999 ;94(10):3010-4.

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