「インフルエンザは冬の病気なのに、8月から流行して大丈夫?」「今年は早く流行した分、冬には落ち着くのでしょうか?」
2026年8月、全国のインフルエンザ定点当たり報告数が流行開始の目安である「1」を超え、例年よりかなり早く流行シーズンに入りました。過去にも夏から秋に流行が始まり、その後冬に再び大きな波が起きたシーズンがあります。今回は過去のデータを振り返りながら、2026/27シーズンの見通しとインフルエンザワクチンをいつ接種するのがよいかを解説します。
目次
1. 2026年8月、インフルエンザが異例の早さで流行入り
厚生労働省が2026年8月28日に公表した第34週(8月17日~23日)の感染症発生動向調査では、全国のインフルエンザ定点当たり報告数は1.11、報告患者数は4,094人でした。
厚生労働省では定点当たり報告数「1.00」を流行開始の目安としているため、2026/27シーズンは8月の時点で全国的な流行入りとなりました。厚生労働省によると、感染症法が施行された1999年以降では、2009年に次いで2番目に早い流行入りです(前年から流行状態が継続していた2023年を除く)。
大阪府では全国より低いものの増加傾向
同じ第34週の大阪府は定点当たり0.45で、全国平均の1.11より低い水準です。ただし、7月末から8月にかけて患者報告は増えており、大阪でも今後の動向には注意が必要です。
2. 夏から流行した2023/24シーズンはどうなった?
今回のような早い流行を考えるうえで参考になるのが、2023/24シーズンです。
2023年第35週(8月末)の時点で全国の定点当たり報告数は2.56、第36週には4.48となり、9月初旬にはすでに明らかな流行状態となっていました。
しかし、「夏から流行したので冬までに終わった」という経過ではありません。
2023/24シーズンの大まかな流れ
9月上旬:約4.48
↓
12月:約33.73
↓
年末年始:約12~13まで低下
↓
翌年2月:約23.99まで再上昇
つまり、9月から流行していたにもかかわらず、12月に大きなピークがあり、さらに翌年2月にも再び患者数が増えました。
なお、2月の再上昇にはB型インフルエンザの増加も関係しています。単純に「同じA型インフルエンザが2回流行した」と考えるのではなく、シーズンの途中で流行するウイルスの型や亜型が変化することも重要なポイントです。

早い時期から流行したシーズンでも、冬に再び大きな流行が起きています。
3. 2025/26シーズンも「早期流行→冬に再上昇」
昨シーズンの2025/26シーズンも似た経過をたどりました。
2025年は9月下旬に全国の定点当たり報告数が1を超え、例年より早く流行入りしました。
2025/26シーズンの大まかな流れ
9月:約1.04
↓
11月:約51.24
↓
年始:約10.34
↓
2月:約43.35まで再上昇
11月に非常に大きな流行が起き、年末年始にはいったん患者数が減りました。しかし、その後2月には再び定点当たり40を超える大きな波がみられました。
この第2波ではB型だけでなくA/H3系統のウイルスも検出されており、「秋にA型が流行したから、その冬はもうA型にかからない」と考えることはできません。
4. 今年も冬にインフルエンザが再流行する可能性は?
2023/24、2025/26の2シーズンをみる限り、「8~9月に流行したから、12~2月にはもう流行しない」と考えるのは適切ではありません。
インフルエンザA型にはA/H1N1pdm09、A/H3N2など複数の亜型があり、さらにシーズン後半からB型が増える場合もあります。
■ 2026/27シーズンに考えられる経過
8~9月:早期流行
↓
10~11月:さらに増加、またはいったん減少
↓
12~2月:A型の再上昇やB型を含む第2波
もちろん、過去2シーズンのデータだけから今年の流行を正確に予測することはできません。気温や湿度、人の移動、学校での流行、流行するウイルス株など多くの要因が関係します。
ただし、少なくとも「流行開始が早かったから、今年は早く終わる」と判断できる根拠は乏しく、冬まで引き続き注意が必要です。
5. 2026年のインフルエンザワクチンはいつ打つ?
流行開始が早いと、「今年はワクチンも8月や9月に打った方がいいのでは?」と考える方もいると思います。
インフルエンザワクチンは、接種したその日から十分な効果が得られるわけではありません。一般的には十分な抗体ができるまでには約2週間かかり、抗体はおおむね5~6か月程度維持されると考えられています。一方、ここで大事なのが、抗体が残っている=感染予防効果が同じ強さで6か月続く、ではないことです。抗体は数か月維持されますが、実際の感染・発症予防効果は時間の経過とともに徐々に低下することが、複数の研究で示されています。
■ 早すぎても、遅すぎても悩ましい
例えば8月や9月初旬に接種すると、秋の流行には備えやすくなりますが、1~2月の流行時には接種からかなり時間が経過しています。
反対に12月まで待つと、冬後半の免疫は保ちやすくなる一方で、10~11月に流行が拡大した場合には間に合わない可能性があります。
当院では10月中旬~11月上旬をひとつの目安に
今年はすでに8月から流行が始まっていますが、過去のシーズンを見ると冬の再流行も十分考えられます。そのため現時点では、10月中旬~11月上旬ごろの接種が、秋の流行と冬の流行をバランスよくカバーしやすい時期と考えています。実際の接種時期は、その後の大阪府の流行状況や年齢、基礎疾患なども踏まえて判断します。
米国CDCの予防接種諮問委員会(ACIP)も、多くの方について9~10月の接種を基本としつつ、特に高齢者では早すぎる接種により冬後半の効果が低下する可能性を懸念しています。
65歳以上の方、心臓・肺・腎臓などの基礎疾患がある方、糖尿病などで通院中の方については、感染した場合に重症化する可能性もあるため、地域の流行状況をみながら接種時期を主治医と相談するとよいでしょう。

接種から十分な免疫がつくまでには約2週間かかります。流行状況をみながら接種時期を考えましょう。
6. インフルエンザが疑わしい症状があれば早めに相談を
インフルエンザでは、急な発熱、悪寒、頭痛、関節痛・筋肉痛、強い倦怠感、咳、のどの痛みなどがみられます。ただし、必ず高熱が出るとは限らず、高齢者や基礎疾患のある方では典型的な症状が出ない場合もあります。
抗インフルエンザ薬は、一般に症状が出てから早い時期に開始するほど効果が期待しやすいため、強い症状がある場合や重症化リスクが高い方は早めの受診をご検討ください。
やまおか内科クリニックでは、大阪市平野区を中心に、東住吉区・生野区など近隣地域の方の発熱・風邪症状の診療にも対応しています。
7. よくある質問
8. まとめ
2026年は8月という異例の早さでインフルエンザが全国的な流行シーズンに入りました。しかし、過去のデータを見ると、早く流行したからといって冬の流行がなくなるとは限りません。
2023/24、2025/26シーズンはいずれも秋から流行した後、冬に再び患者数が大きく増えています。今年も冬まで流行動向を確認していく必要があります。
ワクチンについては、流行開始が早いことだけを理由に極端に前倒しするのではなく、冬後半の効果も考慮する必要があります。当院では現時点で10月中旬~11月上旬をひとつの目安と考えています。
今後も厚生労働省や大阪府の感染状況を確認しながら、流行状況やワクチン接種について随時お知らせしていきます。
9. 参考文献・資料
1. 厚生労働省.インフルエンザの発生状況について.令和8年第34週(2026年8月17日~8月23日).全国定点当たり報告数1.11、報告数4,094人.厚生労働省資料
2. 国立健康危機管理研究機構(JIHS).感染症発生動向調査:インフルエンザ 2023/24シーズン、2025/26シーズン.
3. Grohskopf LA, Blanton LH, Ferdinands JM, et al. Prevention and Control of Seasonal Influenza with Vaccines: Recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices — United States, 2025–26 Influenza Season. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2025;74:500-507. doi:10.15585/mmwr.mm7432a2.
4. Belongia EA, Sundaram ME, McClure DL, Meece JK, Ferdinands J, VanWormer JJ. Waning vaccine protection against influenza A(H3N2) illness in children and older adults during a single season. Vaccine. 2015;33(1):246-251.
5. Young B, Sadarangani S, Jiang L, Wilder-Smith A, Chen MI-C. Duration of Influenza Vaccine Effectiveness: A Systematic Review, Meta-analysis, and Meta-regression of Test-Negative Design Case-Control Studies. J Infect Dis. 2018;217(5):731-741. doi:10.1093/infdis/jix632.
6. Doyon-Plourde P, Przepiorkowski J, Young K, Zhao L, Sinilaite A. Intraseasonal waning immunity of seasonal influenza vaccine – A systematic review and meta-analysis. Vaccine. 2023;41(31):4462-4471. doi:10.1016/j.vaccine.2023.06.038.
7. World Health Organization. Vaccines against influenza: WHO position paper.
この記事を書いた人
やまおか内科クリニック
院長 山岡 祥
大阪大学医学部卒業
大阪市平野区で一般内科・生活習慣病・消化器内科など幅広く診療しています。インフルエンザをはじめとした感染症についても、最新の公的データや医学的根拠を確認しながら、患者さんに分かりやすい情報提供を心がけています。








