2023年11月16日追記:中医協総会は11月15日「ウゴービ皮下注」の薬価収載を了承し、11月22日付けで薬価収載となります。
2023年3月28日追記:ノボ・ノルディスクファーマは「ウゴービ皮下注」に関して厚生労働省より肥満治療薬として承認を得たと公表しました(3月27日)。
2023年1月27日、厚生労働省の薬食審・医薬品第一部会で「肥満症」を対象疾患としたウゴービ皮下注(セマグルチド)を承認することを了承したと報じられました。2~3月には正式に承認される見通しのようです。
肥満治療薬として期待される「ウゴービ」について解説します。
現在ウゴービ処方希望のお問い合わせを多数頂いておりますが、保険診療・自費診療共に当院では処方はできません。
肥満・肥満症でお悩みの方はお近くのかかりつけ医にご相談下さい。
ウゴービとは?
一般名は「セマグルチド」と言い、「GLP-1受容体作動薬」に分類されます。
糖尿病治療薬の「オゼンピック」や「リベルサス」と同じ成分です。
投与方法は「オゼンピック」と同様、週1回皮下注射を行います。
容量は0.25㎎、0.5mg、1.0㎎、1.7mg、2.4mgの5段階があり、0.25mgからスタートし4週毎に増量していきます。
「ウゴービ」は既に糖尿病治療薬で使用されている「オゼンピック」や「リベルサス」と同様に、脳での食欲調整機構に作用したり、胃の蠕動運動の抑制することで体重減少効果が期待されます。オゼンピックの最大投与量が1.0mgであったのに対して、ウゴービは最大2.4mgの投与が可能です。「オゼンピック」の最大2.4倍と考えると効果は高そうです。
対象となる患者は?処方できる施設も限られる?
高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれかを有した肥満症患者
ただし、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、以下に該当する場合に限る。
「BMI:27以上で2つ以上の肥満に関連した健康障害がある※。」
もしくは
「BMI:35以上」
※肥満症に関する健康障害
(1)耐糖能障害(2 型糖尿病・耐糖能異常など)(2)脂質異常症(3)高血圧(4)高尿酸血症・痛風
(5)冠動脈疾患(6)脳梗塞(7)非アルコール性脂肪性肝疾患
(8)月経異常・不妊(9)閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群(10)運動器疾患(11)肥満関連腎臓病
2023年11月15日公表の情報ではさらに以下の条件が追加されています。
ー最大投与期間は68週まで
ー2カ月に1回以上は管理栄養士による栄養指導を受けること。
ー常勤医師が日本循環器学会・日本糖尿病学会・日本内科学会の専門医を有すること。
ー上記学会から教育研修施設として認定された施設であること。
この中で最も厳しい条件は教育研修施設であることです。
ほとんどのクリニック・診療所は教育研修施設ではなく、該当するのは実質地域の総合病院に限られます。
ウゴービの適応となる患者さんはかかりつけ医で基本的な投薬や食事運動指導を受けた後に、総合病院へ紹介という流れになりそうです。
昨今美容目的や適用外使用でのGLP-1製剤の需要増加に伴い流通・供給不足となっており、国も警戒しているのかもれません。
(中医協資料より抜粋)
どれくらい体重が減るの?
気になる体重減少の効果ですが、
日本人を含んだ東アジア人を対象とした臨床試験(STEP6試験)では
68週間後の体重が、
ウゴービ2.4mg群で-13.2%
ウゴービ1.7mg群で-9.6%
プラセボ群で-2.1%
という結果になっています。(※対象患者は「ウゴービ」適応患者と同じです)
また2.4mg群の83%、1.7mg群の72%で5%以上の体重減少を達成しています。(プラセボ群では21%)
100kgを超える人では単純計算で10kg以上の体重減少を達成したわけですね。
有害事象に関しては
2.4mgで86%、1.7mg群で82%、プラセボ群で79%と報告されています。
特にウゴービでは胃腸障害が多く、2.4mg群で59%、1.7㎎群で64%、プラセボ群では30%でした。
食欲を落とすことが「ウゴービ」の目的なので自然な結果とも言えます。
費用はどれくらい?
現時点(2023年2月6日時点)では正式承認されておらず、薬価も不明です。
11月15日に薬価収載が承認されました。ウゴービの各容量の価格は以下の通りです。
0.25mg:1876円
0.5mg:3201円
1mg:5912円
1.7mg:7903円
2.4mg:1万740円
参考:オゼンピックの薬価
0.25mg:1376円/キット
0.5mg:2752円/キット
1.0mg:5504円/キット
オゼンピックと比較して少し高めの設定となっています。
まとめ
待望の肥満治療薬「ウゴービ」についてでした。
これまでは糖尿病がある患者さんでしか「オゼンピック」や「リベルサス」が使えず、自費で処方してもらしかありませんでした。
いよいよ保険での処方が可能になりますが、条件が非常に厳しく診療所での処方は困難となるでしょう。
肥満でお悩みの方はまずかかりつけ医に相談しましょう。
文献)
肥満症薬・ウゴービなど3製品承認へ プレセデックスの新規小児適応も 薬食審・第一部会で了承
Lancet Diabetes Endocrinol, 2022 Mar;10(3):193-206
中医協資料