会社の定期健診や自治体のがん検診で行われている「便潜血検査」。
「なんのための検査なの?」
「実際、大腸カメラは必要なの?」
と疑問を持つ方のために、総合内科医・消化器内視鏡専門医の見地から、便潜血検査の意味や大腸カメラを受ける必要性について分かりやすく解説いたします。
目次
便潜血(べんせんけつ)ってなに?
大腸がんやポリープがある場合、目に見えないレベルでの少量の血液が便に混じっています。便潜血検査は、その名の通り便に混じった(「潜」んでいる)血液の成分を調べる検査です。
便を少量採取するだけで検査できるため、がん検診や人間ドックでは「大腸がん」のリスクが高い人を拾い上げる(スクリーニング)ために広く行われています。検査精度を上げるために、2日分の便を採取する「2回法」が一般的です。
ちなみに、便潜血検査ではヒトヘモグロビンのみに反応する試薬を用いるため、肉や魚の血液には反応しません。食道や胃からの出血(上部消化管出血)は消化液によって変性するため検出されず、純粋に大腸からの出血のみを正確に検出します。
◆ 大阪市の大腸がん検診について
大阪市では40歳以上の方を対象に、年に1回、わずか300円で大腸がん検診(便潜血検査2日法)を受けることができます。(詳細は 大阪市HP をご覧ください)
当院でもお受付が可能ですので、大腸カメラを一度も受けたことが無い場合は、健康を守る第一歩としてぜひ活用しましょう。
便潜血が陽性の場合に考えられる病気
便潜血検査で「陽性(要精密検査)」と判定された場合、主に以下のような病気の可能性があります。
- ☑大腸がん
- ☑大腸ポリープ
- ☑痔(内痔核など)
- ☑出血性の腸炎(潰瘍性大腸炎、クローン病など)
この中で最も見過ごしてはならないのが「大腸がん」です。発見が遅れると治療法やその後の予後に大きく関わるため、「きっと痔のせいだろう」と自己判断で放置することは非常に危険です。便潜血検査は、主にこの大腸がんを症状が出ない初期段階で早期発見するために行われます。
大腸がんの罹患率と年齢別の特徴
最新のデータ(全国がん登録罹患データ)によると、大腸がんは日本人が最も多く罹患する(診断される)がんの第1位となっています。年間で10万人あたりおよそ123人、つまり約1,000人に1人が大腸がんと診断されている現状があります。また、がんによる死亡数でも第2位を占めており、いかに早期発見・早期治療が重要であるかが分かります。



グラフを年齢別に細かく見ると、大腸がんのリスクは30代後半から徐々に始まり、50歳を過ぎたあたりから急激に跳ね上がっていることが一目で分かります。生活習慣の欧米化などに伴い、大腸がん全体の数も年々増加傾向にあるため、定期的なチェックが欠かせません。
便潜血が陽性となった場合の「大腸がん確率」
便潜血検査で「1回でも」陽性が出た場合は、必ず大腸カメラ(大腸内視鏡検査)を受けましょう。全国平均の統計では、便潜血陽性の方の中で実際に大腸がんが見つかる確率は約3%と報告されています。
「3%なら意外と低いから大丈夫だろう」と思われるかもしれませんが、これはすべての年齢層や、1回のみ陽性・2回とも陽性のデータをすべて混ぜた大まかな数字です。年齢や陽性の回数によって、その危険度は以下のように跳ね上がることがシミュレーションデータで証明されています。
| 対象属性 | 1回のみ陽性 | 2回とも陽性 |
|---|---|---|
| 40代男性 | 1.8% | 18.7% |
| 40代女性 | 1.6% | 24.6% |
| 50代男性 | 5.2% | 38.7% |
| 50代女性 | 1.8% | 20.8% |
| 60代男性 | 10.1% | 61.2% |
| 60代女性 | 4.8% | 50.4% |
(シミュレーション出典:日本消化器がん検診学会雑誌)
このように、年齢が上がるにつれてリスクが上昇するのはもちろん、「2回とも陽性」であった場合は数10%という非常に高い確率で大腸がんが隠れているという試算になります。1回のみの陽性であっても精密検査(大腸カメラ)の基準を満たしますが、特に「50歳以上」や「2回陽性」に該当する方は、一刻も早く専門外来を受診する必要があります。
便潜血が「陰性」なら大腸カメラはいらない?
便潜血が陰性(異常なし)であれば、ひとまず大腸がんのリスクは低いと評価されますが、がんの性質や出血のタイミングによっては「本当は病気があるのに陰性と出てしまう(偽陰性)」の可能性が少なからず存在します。
そのため、もし結果が陰性であっても、以下のような自覚症状が体にある場合は決して過信せず、大腸カメラ検査を強く検討してください。
- ☑最近、原因不明 of 体重減少がある
- ☑急に頑固な便秘になった(便の通りが悪い)
- ☑便秘と下痢を不自然に繰り返す
- ☑お腹に触れると「しこり」のようなものがある
大腸カメラは「いつまで」に受ければいいの?
「大腸カメラをやらなきゃいけないのは分かったけれど、下剤の準備もあるし忙しくてなかなか時間が作れない…」と先延ばしにされてしまう方も少なくありません。
便潜血検査で陽性となってから、実際に大腸カメラを受けるまでの「期間」がどれほどがんの進行リスクに関わるかを調査した有名な海外論文(JAMA誌)があります。この研究では、陽性発学から「1ヶ月以内に大腸カメラを受けたグループ」に対し、仕事などで先延ばしにして「10ヶ月以降に受けたグループ」では、明らかに大腸がんの発症リスクおよび診断時のステージ(進行度)が深刻化していたと報告されています。
結果が出てから過度にパニックになって焦る必要はありませんが、がんを早期の安全な段階で摘み取るためにも、陽性判明から遅くとも「半年以内(できれば数ヶ月以内)」には大腸カメラを受けることを強くおすすめします。
まとめ
- ☑便潜血検査は、症状のない大腸がんを早期発見するための大切なスクリーニング検査。
- ☑食生活の変化等に伴い、日本国内の大腸がん患者数・死亡数は年々増加している。
- ☑大阪市では40歳以上を対象に、年1回300円で手軽に大腸がん検診が受けられる。
- ☑便潜血が2回とも陽性の場合や50歳以上の場合は、がんの確率が顕著に高まる。
- ☑二次精密検査としての大腸カメラは、陽性判定から「半年以内」の受診が極めて推奨される。
- ☑結果がたとえ陰性であっても、お腹のしこり、便秘・下痢の継続などの症状があれば大腸カメラの検討を。
便潜血陽性判定による大腸カメラ(大腸内視鏡検査)のご相談・ご予約
・Association Between Time to Colonoscopy After a Positive Fecal Test Result and Risk of Colorectal Cancer and Cancer Stage at Diagnosis (JAMA. 2017;317(16):1631-1641)
・大腸内視鏡検診の成績を用いた, 便潜血検査陽性反応適中度推定のシミュレーション (日本消化器がん検診学会雑誌, Vol.55(5), Sep. 2017)
・国立研究開発法人国立がん研究センター がん情報サービス がん統計情報
【所属・資格】
・日本内科学会認定 総合内科専門医
・日本消化器病学会認定 消化器病専門医
・日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医










