「胃カメラは苦しい」「オエっとなりそうで怖い」と感じている方は少なくありません。
私は内視鏡専門医としてこれまで数多くの胃カメラ検査を行ってきましたが、多くの方が最初に不安に感じるのが、「つらさ」「恐怖心」「以前のつらい経験」です。
しかし、現在の内視鏡検査は、医師の工夫と患者さんの準備次第で、驚くほど楽に受けられるようになっています。
今回は「できるだけ楽に胃カメラを受けるためのコツ」を、医師の視点から詳しくご紹介します。
なぜ胃カメラが必要なのか?
胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)は、食道・胃・十二指腸の粘膜を直接観察し、胃がんや胃潰瘍、逆流性食道炎、ピロリ菌感染などの病気を早期に発見するために非常に重要な検査です。
特に胃がんは、早期に発見すれば内視鏡治療で完治が可能な時代です。
症状が出てからでは進行していることもあるため、健診で引っかかった方や、違和感がある方は早めに検査を受けて頂くことが大切です。
胃カメラがつらいと感じる理由とは?
胃カメラを「つらい」と感じる主な理由は以下の通りです。
・嘔吐反射(のどにスコープが触れたときのオエッという反応)
・のどや食道の違和感や異物感
・検査に対する恐怖感や不安感
・過去のつらい体験がトラウマになっている
このようなつらさは、適切な方法を選ぶことで軽減できます。
胃カメラを楽に受ける5つの方法
① 経鼻内視鏡(鼻からの胃カメラ)を選ぶ
口からの太いスコープに比べ、経鼻内視鏡は細く、舌の奥に触れないため嘔吐反射が起こりにくくなります。また、会話しながらリラックスして受けることができる点もメリットです。
鼻腔が狭い方やアレルギーのある方には不向きな場合もありますが、快適な選択肢となる可能性があります。
② 鎮静剤を使う(ウトウト眠って受ける)
「どうしても怖い」「前回つらかった」という方には、鎮静剤の使用も一つの手です。
鎮静剤を点滴で投与し、ウトウトと眠っているような状態で検査を受けられます。
ただし、使用後は数時間の安静が必要で、当日の車の運転は禁止となります。
③ 鎮静剤を使わない場合の嘔吐反射軽減法
鎮静剤を使わずに胃カメラを受ける方も多くいらっしゃいます。その場合でも、いくつかの工夫でつらさを大きく軽減できます。
● 鼻からの挿入(経鼻内視鏡)を選ぶ
先ほども述べた通り、経鼻内視鏡は舌の根元に触れないため、嘔吐反射が非常に少なく、鎮静剤なしでも楽に受けやすい方法です。
● 顎を前に突き出す
スニッフィングポジション(においを嗅ぐ姿勢)と言います。
少し顎を突き出すことでのどの角度が緩やかになりスコープがスムーズに通りやすくなります。
看護rooより引用改編 https://www.kango-roo.com/learning/4153/
● 呼吸に集中する(鼻呼吸を意識)
検査中は「ゆっくりとした鼻呼吸」を意識しましょう。呼吸が浅くなると緊張や嘔吐反射が強くなります。吸って、吐いてを繰り返すリズムに意識を向けることで、不快感が和らぎます。
● 力を抜いてリラックス・目をつぶらない
のどや体に力が入っていると、スコープの刺激が強く感じられます。肩や手足を意識的にゆるめて、力を抜くようにしましょう。目をつぶると無意識に全身に力が入ってしまいます。遠くのほうをぼーっと眺めるのがおすすめです。
● 看護師や医師とアイコンタクトを取る
検査中、看護師と目を合わせたり合図を交わすだけでも安心感が増し、反射が起きにくくなります。我慢しすぎず、「つらい」と感じたら伝えることも大切です。
● 局所麻酔をしっかり使用する
口からの胃カメラでも、のどへの麻酔スプレーやゼリーで嘔吐反射を抑えることが可能です。当院では、鼻やのどの麻酔を時間をかけてしっかりと効かせてから検査を行います。
④ 前日の準備も大切
検査前日は以下の点に注意しましょう。
・夕食は早め・消化のよいものを
・アルコールは控える
・睡眠をしっかりとる
空腹状態で胃が空っぽになっていることで検査時間を短縮することが可能です。また体調を整えておくことが快適な検査に直結します。
⑤ 信頼できる医師・施設を選ぶ
胃カメラの快適さは、医師の技術や施設の設備、対応するスタッフによって大きく変わります。
検査を行う医師が内視鏡専門医かどうかホームぺージで確認してみましょう。
まとめ:正しい準備と方法で、胃カメラはもっと楽になる
胃カメラは、つらい検査ではありません。正しい知識と適切な方法を選ぶことで、楽に・安心して受けることができます。
「鼻からの内視鏡」「鎮静剤の使用」「呼吸や力の抜き方」など、自分に合った受け方を医師と相談しながら選びましょう。
胃がんの早期発見・健康管理のためにも、定期的な胃カメラ検査をおすすめします。
やまおか内科クリニックでは胃カメラをできるだけ楽に受けていただけるよう取り組んでおります。
不安や疑問がある方は、どうぞお気軽にご相談ください。
この記事を書いた人
やまおか内科クリニック院長 山岡 祥
日本内科学会 認定内科医
日本消化器病学会 専門医
日本消化器内視鏡学会 専門医