【便潜血陽性】「忙しいから」で放置していませんか?最新データが示す「検査遅れ」の本当のリスク

大阪市平野区のやまおか内科クリニック、便潜血陽性は大腸カメラを。

はじめに:健康診断の結果、封筒の中に「陽性」の文字を見つけたあなたへ

健康診断や人間ドックの結果が届き、恐る恐る中身を確認したとき、「便潜血検査:陽性(+)」という文字を見てドキッとした経験はありませんか?
「まさか自分が」 「痔があるから、そのせいだろう」 「お腹も痛くないし、便も普通だから大丈夫だろう」

そう自分に言い聞かせ、再検査(大腸カメラ)の予約を先延ばしにして、気づけば数ヶ月、あるいは半年以上が経過してしまっていないでしょうか。実は、この「先延ばし」こそが、あなたの将来の健康を脅かす最大のリスクであることが、最新の医学研究で明らかになっています。

今回は、世界的に権威のある医学誌『Gut』に2022年に掲載された衝撃的なデータをご紹介しながら、なぜ「今すぐ」大腸カメラを受けるべきなのか、専門医の立場からお話しします。

「症状がないから大丈夫」は大きな間違い

まず大前提としてお伝えしたいのは、「早期の大腸がんに自覚症状はほとんどない」ということです。

便潜血検査は、目に見えない微量な血液を感知する検査です。この段階で見つかる病変は、まだ症状を出さない早期のものである可能性が高いのです。逆に言えば、腹痛や血便、便通異常といった症状が出てからでは、がんはすでに進行している可能性が高くなります。

便潜血陽性という結果は、「今ならまだ間に合う、早く見つけて」という体からのサインなのです。

最新論文が示す「先延ばし」の代償

今回ご紹介するのは、イタリアのスクリーニングプログラムに参加した約11万人のデータを追跡調査した研究です。

【紹介する論文】

  • 論文: Risk of advanced colorectal cancer and death after a positive faecal immunochemical test: a population-based cohort study

  • 著者: Zorzi M, et al. (Gut 2022;71:561-7)

この研究では、便潜血陽性と判定されてから大腸カメラを受けるまでの期間が、がんの進行度や生存率にどう影響するかを詳細に解析しています。

データ1:進行がん(ステージ3・4)が見つかる確率

この研究では、陽性判定後3ヶ月以内に検査を受けた人を基準(リスク1.0)として比較しています。 検査を受けるのが遅れると、進行がん(ステージ3または4)の状態で見つかるリスクが以下のように跳ね上がることがわかりました。

  • 7〜9ヶ月の遅れ: リスク上昇の傾向が見え始めます。

  • 9〜12ヶ月の遅れ: 進行がんのリスクは 約1.34倍 に上昇。

  • 12ヶ月(1年)以上の遅れ: 進行がんのリスクは 約1.76倍 に急上昇。

つまり、検査を1年先延ばしにすると、早期がんではなく、治療の難しい進行がんの状態で見つかる可能性が2倍近くになってしまうということです。

データ2:大腸がんで「死亡」する確率

さらに深刻なのが、死亡リスクのデータです。 検査までの期間が空けば空くほど、治療が間に合わず命を落とす危険性が高まります。

  • 12ヶ月(1年)以上の遅れ: 大腸がんによる死亡リスクは 約2.03倍 に上昇。

たった1年、「忙しいから」と検査を後回しにしただけで、大腸がんで亡くなる確率が「2倍」になってしまうのです。これは決して無視できる数字ではありません。

平野区東住吉区生野区の大腸カメラはやまおか内科クリニックへ

結論:検査はできるだけ早く、3か月以内には受けましょう

この論文の結論は非常に明確です。 「便潜血陽性の結果が出たら、可能な限り速やかに大腸カメラを受けるべきである」

データ上、最もリスクが低かったのは「3ヶ月以内」に受診したグループです。 逆に、「9ヶ月(270日)」を超えるとリスクの上昇は顕著になり、「1年」を超えると危険な領域に入ります。

もし、あなたが結果を受け取ってから数ヶ月経っていたとしても、遅すぎることはありません。「今日」が、残りの人生で一番早い受診のタイミングです。これ以上リスクを上げないために、今すぐ行動を起こしてください。

「痔のせいだろう」という自己判断の落とし穴

外来でよく耳にするのが、「私は痔持ちだから、今回も痔の血が混ざっただけです」という言葉です。

確かに、便潜血陽性の原因が痔であることは少なくありません。しかし、「痔がある人が、大腸がんにならない」という保証はどこにもありません。 痔からの出血と、がんやポリープからの出血が同時に起きている可能性も十分にあります。

便潜血検査だけでは、その血が「痔」からなのか「がん」からなのかを区別することはできません。それを確かめる唯一の方法が、大腸カメラ(大腸内視鏡検査)なのです。

自己判断で「痔のせい」と決めつけ、上記の研究データにあるような「危険な期間」まで放置してしまうことだけは避けてください。

大腸カメラは「がんを予防する」検査

大腸カメラ検査に対して、「痛そう」「苦しそう」「恥ずかしい」というイメージをお持ちの方も多いかもしれません。

しかし、近年の内視鏡技術の進歩は目覚ましいものがあります。 当院をはじめ、多くのクリニックでは以下のような工夫を行っています。

  • 鎮静剤の使用: 眠っているような、あるいはボーッとしている状態で検査を受けられるため、痛みや不安をほとんど感じません。

  • 高精度のスコープ: 微細な病変も見逃さない高画質なカメラを使用しています。

  • その場でポリープ切除: 大腸がんは、良性の「ポリープ」が時間をかけて「がん」に変化するケースが多くあります。検査中にポリープが見つかった場合、その場で切除することで、将来の大腸がんを未然に防ぐことができます。

つまり、大腸カメラは「がんを見つける」だけでなく、「がんを予防する(治療する)」ことができる、非常に価値のある検査なのです。

未来の自分のために、今すぐ検査を

便潜血陽性の通知は、誰にとっても怖いものです。見なかったことにしたくなる気持ちは痛いほど分かります。

しかし、先ほどご紹介した論文のデータが示す通り、時間は待ってくれません。 今、勇気を出して検査の予約を入れることが、1年後、5年後、10年後のあなたと、あなたの大切な家族の笑顔を守ることにつながります。

「あの時、検査を受けておけばよかった」と後悔する人を、私たちは一人でも減らしたいと願っています。

当院では、初めての方でも安心して検査を受けていただけるよう、丁寧な事前説明と苦痛の少ない検査環境を整えています。 もし手元に「陽性」の結果をお持ちなら、どうかそのままにせず、まずは一度ご相談ください。あなたの「はじめの一歩」を、私たちが全力でサポートします。

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