GLP-1療法:週1回から隔週へ “減らしても” 効果が続く?最新データをわかりやすく解説

GLP-1ダイエット 注射回数 減らす 費用

はじめに

2型糖尿病や肥満治療において、「GLP-1受容体作動薬」が注目を集めています。最近ではマンジャロやオゼンピックが有名ですね。

「順調に痩せてきたけれど、この注射はずっと毎週続けなければいけないの?」 「毎月の治療費の負担をもう少し減らしたい…」

GLP-1受容体作動薬(マンジャロ、オゼンピック、ウゴービなど)でダイエットに成功された患者さんから、よくこのようなご相談をいただきます。目標体重に達した後の「維持期」においては、必ずしも週1回の注射が必要ないケースがあります。今回は、注射の頻度を「毎週(月4回)」から「隔週(月2回)」に減らしても効果が続くのか? という疑問について、最新の知見を交えてお話しします。

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研究の概要

この研究は、米国で開催された学会 Obesity Week 2025 で報告された小規模な観察データです。 (TribeMD)
主なポイントは以下の通りです。

  • 対象:肥満を主訴とし、GLP-1薬(セマグルチドまたはチルゼパチド)を週1回の投与である程度減量・代謝改善を達成した30名前後(平均BMI約30)。 (MedCentral)
  • 介入:週1回投与から、「維持期」として隔週(=2週間に1回)投与に切り替え。
  • フォローアップ期間:維持期に平均30〜40週(約7〜9 か月)追跡。 (TribeMD)
  • 主要評価項目:体重変化、BMI、メタボリック症候群の基準項目(血糖、トリグリセリド、HDLコレステロール、血圧など)およびその項目の数。 (MedCentral)

研究結果

主な結果は以下のようになります。

1. 体重減少効果

  • 週1回投与期に、平均で 12.3 kgの減少、これは約14%の体重減少に相当。 (MedCentral)
  • その後、隔週投与に切り替えた維持期ではさらに平均 1.3 kgの減少(約2%)を認め、体重減少がほぼ維持された。 (MedCentral)
    →つまり、週1回の治療で一定の体重減少が得られたのちに、投与間隔を2倍に伸ばしても、減量効果を大きく失うことなく体重を維持できたということです。

2. 代謝・メタボリック症候群の指標

  • 治療開始前には、対象者の約85%がメタボリック症候群やその疾患群を1つ以上持っていた。 (MedCentral)
  • 週1回治療後、疾患群を持つ人の割合が約74%に低下。維持期(隔週投与期)ではさらに約60%まで低下。 (MedCentral)
  • 血糖(HbA1c)、トリグリセリド、HDL、血圧などの改善は、隔週投与に切り替えた後も維持されていた。 (Medscape)

3. 投与頻度を戻さなければならなかった人

  • 約30名のうち4名(約11–16%)が、体重増加のため隔週から再び週1回投与に戻したという報告あり。 (TribeMD)
  • その後も増量傾向が続いたケースがあったとの記載もあります。 (MedCentral)

→10人に1~2人程度は投与間隔を伸ばすと減量効果が維持できなかったようです。マンジャロやオゼンピックで減量できた人でも投与間隔を伸ばすだけでリバウンドしてしまう人が一部いると解釈できます。

 


この研究が示唆すること

このデータから、以下のようなことが示唆されます。

◎ 投与間隔を伸ばしても「減量効果を維持できる」可能性がある。

週1回から隔週に切り替えたにもかかわらず、体重・代謝改善効果がほぼ維持されており、治療成績が一定のレベルに達したあとは「頻度を少し落としても大丈夫」という選択肢の可能性を示します。これは、薬剤コストの軽減(隔週=薬量/回数が少なくなる)、患者負担の軽減(注射回数が少なくなる)、長期継続しやすさの改善という観点からも興味深いですね。

 

◎ 個別化・段階的アプローチの重要性

研究者も「すべての人に対していきなり隔週に切り替えろというわけではない。安定して効果が出ていて、体重・代謝が落ち着いている患者に限って、慎重に検討可能」という立場をとっています。 (MedCentral)
つまり、

「まずは週1回投与でしっかりと目標を達成する 」

食事運動習慣等も考慮し、「維持期」に入れそうかを評価する

安定している隔週に切り替える
という運用が現実的だと言えます。

 

◎ 継続モチベーション・コスト・安全性も視野に

GLP-1薬(マンジャロやオゼンピック)は効果が大きい反面、コストや副作用、長期継続の難しさ(投与の手間、薬剤耐性・維持効果の懸念など)も指摘されています。今回のような「頻度を落とせる」可能性は、患者さんとってメリットがあるかもしれません。ただし、研究自体が 小規模・観察研究であるため、「標準治療としてすぐに切り替えを推奨するものではない」という慎重な姿勢も示されています。 (MedCentral)

 


当クリニックでの視点・実践に向けた考え方

当院の肥満外来・生活習慣病外来として、今回の知見をどのように患者さんの相談・運用に生かせるかを整理します。

  1. 対象となる患者さん
    以下のような方が、「投与頻度減少を検討可能」な候補になるかもしれません

    • GLP-1薬を週1回投与で、減量・改善が順調に進み、体重・代謝指標が落ち着いている方
    • 副作用が少なく、注射ペース・コスト・継続性に課題を感じている方
    • 医師・看護師・管理栄養士と投薬・生活習慣改善のフォローが可能な方
  2. 導入・切り替えの手順イメージ
    • まず標準の週1回投与+生活習慣修正で目標達成(例:体重10〜15%減)
    • 目標に到達・安定したら「維持期」を意識し、隔週投与の可否を検討
    • 切り替え後も、生活習慣(食事・運動・睡眠)をしっかり継続することが維持には不可欠
    • 切り替え後も定期的(3 か月毎など)に体重・代謝指標・血圧・脂質などをチェック
    • 体重再増加・代謝悪化がみられたら、週1回に戻す可能性を考慮する
  3. 留意すべき点・限界
    • この研究は対象数が30名前後と少ないため、個別の反応・長期成績(2年以上など)については未知数であること。
    • 原データは「実臨床で観察されたもの(レトロスペクティブ)」「無作為化比較試験ではない」ため、バイアスが含まれている可能性あり。
    • 日本人データ・保険収載状況・薬剤コスト・保険適用範囲など、国際データをそのまま日常診療に当てはめる際には注意が必要。
    • 投与頻度を減らす=「副作用ゼロ」「費用ゼロ」ではなく、患者負担・再増加リスク・フォロー体制は依然重要です。

 


今後の展望

このような知見は、肥満・メタボリック症候群治療における “継続可能な治療戦略” を模索するうえで非常に有益と考えます。保険診療のみならず、自由診療でもGLP-1受容体作動薬の処方件数が増加している現状において、「ずっと週1回で」ではなく、治療ステージを「導入期」「維持期」「漸減期」に分け、投与ペースや薬剤量、生活習慣改善支援を段階的に見直していくという考え方は今後重要になるでしょう。
ただし、現段階では “検討の余地あり” という段階です。特に糖尿病の保険診療においては使用方法が定められており、2週に1回の投与はまだ現実的はないかもしれません。減量・ダイエットでの自由診療での使用に関しては、「個々の患者さんで慎重に検討・適切なフォローアップを前提」での運用が大切です。


まとめ

  • GLP-1薬(セマグルチド/チルゼパチド)週1回投与で一定の体重減少・代謝改善を得た後、投与頻度を隔週に減らしてもその効果がほぼ維持できたというデータが小規模ながら報告されました。
  • 投与頻度を下げることでコスト・注射回数・継続性の面でメリットが期待されるものの、すべての患者さんに適用できるわけではなく、慎重な判断・継続モニタリングが必要です。
  • 患者さんには「治療の目標・期間・フォロー体制」を明確にお伝えし、自らの治療戦略に納得・安心して継続していただけるようご案内して参ります。

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この記事を書いた人

やまおか内科クリニック
院長 山岡 祥
日本消化器病学会 専門医
日本消化器内視鏡学会 専門医
日本内科学会 認定医

 


 

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