1日わずか5〜10分のランニングでも寿命が延びる? ~アメリカの大規模研究が示した驚きの結果~

「健康のために運動をしましょう」内科外来でよくお伝えしますが、実際には忙しくて時間が取れないという方も多いのではないでしょうか。そんな忙しい方にも朗報です。アメリカの研究チームが発表した報告によると、「たった1日5〜10分のランニング」でも、寿命を延ばす効果があることが明らかになりました。「Leisure-Time Running Reduces All-Cause and Cardiovascular Mortality Risk(Leeら, JACC 2014)」

5万人を15年間追跡した大規模研究

この研究は、アメリカ・テキサス州の「Cooper Clinic」で行われたもので、18〜100歳の男女約5万5千人を平均15年間にわたって追跡調査したものです。
その結果、期間中に約3400人が亡くなりましたが、ランニングをしていた人たちはしていなかった人に比べて、

◎全ての死因による死亡(全死亡)リスクが30%低下
◎心血管疾患による死亡リスクが45%低下

という結果が得られました。さらに、ランナーは平均で約3年長生きしていたと報告されています。


どのくらい走れば効果があるの?

気になるのは「実際どれくらい走る必要があるのか?」でしょう。興味深いのは、「走る時間や速さ」による差がほとんど見られなかったことです。
研究では、ランニング量を時間・距離・頻度などで分けて分析されていますが、週に50分未満(1日5〜10分程度)のランニングでも、明確な健康効果が得られていました。スピードも時速6マイル(約9.6km/h)以下のゆっくりペースで十分だったのです。

つまり、「短い時間」「ゆっくり走る」だけでも、走らない人に比べて死亡リスクが大きく下がることが分かりました。


継続することが大切

この研究では、数年にわたり運動習慣がどう変化したかも調べられました。その結果、

◎「ずっと走り続けた人」は死亡リスクが最も低く、
◎「途中でやめた人」や「途中から始めた人」でも、走らない人よりは低かった。

という結果でした。
つまり、「たとえ少しでも継続すること」が大切だということです。長距離マラソンのように激しく走る必要はありません。


どんな人に効果があるの?

男女問わず、若い人・年配の人、肥満の有無、喫煙や飲酒の習慣があるかどうかにかかわらず、ランニングをしている人では共通して死亡リスクが下がる傾向が見られました。特に、運動習慣がなかった人が「少しでも走るようになる」だけで、健康効果が得られるという点は注目です。


なぜ走ると寿命が延びるのか?

ランニングを続けることで、心肺機能(持久力)が高まり、血圧・血糖・コレステロールなどの数値が改善することが知られています。今回の研究でも、ランナーは非ランナーに比べて心肺機能が約30%高いことが確認されています。これらの効果が、心臓病や脳卒中、糖尿病などの生活習慣病を予防し、結果的に寿命を延ばしていると考えられます。


やりすぎは逆効果?

一方で、「走れば走るほど良い」というわけではありません。研究では、週3時間以上走っている人では、それ以上の健康効果はあまり見られませんでした。
また、過度な持久的運動は一部の人で心臓への負担(不整脈や心筋障害)を引き起こす可能性も指摘されています。無理をせず、心地よいペースで続けることが長く続けるコツです。


「忙しいから運動できない」人こそチャンス

多くの人が「運動する時間がない」と感じていますが、この研究はそんな人にとって朗報と言えるでしょう。わずか1日5〜10分のランニングでも十分に健康効果があることが証明されたからです。ウォーキングから始めて、体が慣れてきたら軽いジョギングに移行するのも良いでしょう。


まとめ

◎1日5〜10分のランニングでも寿命が延びる
◎速く走る必要はなく、ゆっくりペースでOK
◎続けることが何より大事
◎心臓病や脳卒中のリスクも大きく低下
◎「やらないより、少しでもやる」がポイント


この研究を行った著者らは、「走ることは禁煙や減量と同じくらい重要な健康習慣」と述べています。
忙しい毎日でも、通勤前の5分、昼休みの10分でも構いません。「少し走る」ことから、心も体も健康を取り戻してみませんか?

平野区のやまおか内科クリニックでは糖尿病や高血圧、脂質異常症などの慢性疾患診療に力を入れて取り組んでいます。皆様の健康のサポートをさせていただきますのでお気軽にご相談ください。

参考文献:
Lee DC et al. Leisure-Time Running Reduces All-Cause and Cardiovascular Mortality Risk.
J Am Coll Cardiol. 2014;64(5):472–481.

この記事を書いた人

やまおか内科クリニック
院長 山岡 祥
日本消化器病学会 専門医
日本消化器内視鏡学会 専門医
日本内科学会 認定医

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