ピロリ菌ってなに?胃カメラは受けるべき?ー内視鏡専門医が解説ー

ピロリ菌って? 年代別の感染率について


ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori))は、胃の粘膜に住み着く細菌です。1982年にオーストラリアのWarrenとMarshallが発見しその後胃潰瘍との関係が証明されました。
ピロリ菌の感染経路ははっきりとは分かっていませんが、悪い衛生環境(下水道の整備不良や井戸水の使用など)や家族内での感染が原因と考えられています。感染する時期は主に、免疫が未発達な乳幼児期・小児期です。
ピロリ菌の感染率は年齢とともに上昇傾向があります。

1960年代生まれ:40%前後
1970年代生まれ:20%前後
1980年代、1990年代生まれ:10%前後

(文献1より引用)

 

ピロリ菌に感染すると?


ピロリ菌が体内に入ると、胃や十二指腸の粘膜に住み着きます。
ピロリ菌は胃の粘膜に「炎症」を引き起こし、ピロリ感染胃炎の状態になります。胃炎が長期間続くと正常な胃の粘膜が徐々に萎縮していき、「萎縮性胃炎」となります。
このピロリ菌による炎症は様々な病気の原因になることが明らかになっており、ピロリ菌感染の確認・治療は非常に重要です。

ピロリ菌が原因で起こる疾患
□ 胃癌
□ 胃潰瘍/十二指腸潰瘍
□ 胃MALTリンパ腫
□ 特発性血小板減少性紫斑病
□ 鉄欠乏性貧血
□ 機能性ディスペプシア
など

 

 

ピロリ菌に感染するとどんな症状があるの?


ピロリ菌感染そのもので症状がでることはほとんどありません。
胃炎や胃潰瘍、胃癌に関係した症状が出ることがあり、以下のような症状がある方は注意が必要です。

□ みぞおちが痛む
□ 空腹になるとみぞおちが痛くなる
□ 食欲が落ちた
□ 体重が減ってきた
□ 便が黒い
□ 食後にお腹が張る、ゲップが続く など

 

ピロリ菌の検査・治療の流れ


一般的な「保険診療」でのピロリ菌の検査の流れを解説します。
保険診療でピロリ菌の検査を行うために、まずは胃カメラを受けて頂く必要があります。
胃カメラでピロリ菌感染が疑わしい所見(胃炎や胃潰瘍の有無)を確認し、感染が疑わしい場合にピロリ菌の検査を行います。

ピロリ菌の検査方法
・迅速ウレアーゼ試験(胃粘膜の組織を採取する)
・血中抗体測定(採血)
・尿素呼気試験
・便中抗原測定

以上の検査のいずれかを行い、陽性であれば治療に進みます。

■ ピロリ菌はどうやって治療するの?

ピロリ菌は内服薬で治療することができます。2種類の抗生物質と胃薬の組み合わせを1週間内服します。

内服例)
セットになった製剤
・ボノサップ(除菌成功率92.6%)
アモキシシリン(抗生物質)・クラリスロマイシン(抗生物質)・ボノプラザン(胃薬)
・ボノピオン(除菌成功率:98%)
アモキシシリン(抗生物質)・メトロニダゾール(抗生物質)・ランソプラゾール(胃薬)
・ランサップ(除菌成功率:75.9%)
※除菌成功率は薬剤添付文書から引用

 

一般的に初めての除菌(一次除菌)ではボノサップを使用することが多いですが、抗生物質や胃薬に対するアレルギーがあれば別の薬を組み合わせます。一次除菌に失敗した場合は、一次除菌と異なった抗生物質を用いて二次除菌を行います。
保険診療で可能な治療は二次除菌までで、2回失敗した以降の治療は自費診療となります。

■ 副作用について
一次除菌に伴う副作用は14.8~66.4%で報告されており、最も多いのが下痢・軟便、次いで味覚異常や口内炎、皮疹などが報告されています。

■ 効果判定
内服を1週間完了した後、4週間以上間をあけて除菌効果判定を行います。
効果判定は主に以下の検査を行います。

・尿素呼気試験
・便中抗原

どのような検査でピロリ菌の判定行うかは、医療機関ごとにことなりますので担当医師にご確認下さい。

除菌成功した後は?


ピロリ菌除菌成功後に一時的に胸焼け、呑酸の症状が出現、悪化することがあります。胃カメラで元々食道裂孔ヘルニアや逆流性食道炎の所見があった方などに起こりやすい症状です。これは除菌により胃酸分泌が増加したことが原因です。
通常6か月から1年で自然に改善すること多いですが、症状が残ることもあります。

またピロリ菌を無事除菌できたとしても、胃癌のリスクが完全に無くなったわけではありません。
除菌後も1~2年に1回は、定期的な胃カメラをおすすめします。
胃カメラをご希望の方はやまおか内科クリニックにご相談ください。

参考文献)
Kamada T. et al., Helicobacter. 2015;20(3):192
pylori感染の診断と治療のガイドライン2016改訂版

この記事を書いた人
やまおか内科クリニック院長 山岡 祥
日本内科学会 認定内科医
日本消化器病学会 専門医
日本消化器内視鏡学会 専門医

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