扁桃がん・中咽頭がんの初期症状とは?首のしこりや扁桃炎との違いを医師が解説

「首に痛みのないしこりがあるけれど、がんの可能性は?」「扁桃がんと扁桃炎はどう違うの?」

2026年10月、お笑いコンビ「シャンプーハット」の恋さん(小出水直樹さん)が、首のしこりをきっかけに中咽頭がんが見つかったことを公表されました。実は、中咽頭がんは、のどの痛みがなくても首のしこりから発見されることがあります。今回は、扁桃がん・中咽頭がんの初期症状や扁桃炎との違い、HPVとの関係、検査・治療方法について解説します。

1. 扁桃がん・中咽頭がんとは?

咽頭(いんとう)は、鼻や口の奥から食道につながる部分で、上から「上咽頭」「中咽頭」「下咽頭」の3つに分けられます。 中咽頭がんは、口を開けたときに見えるのどの奥や、舌の付け根などに発生するがんです。 中咽頭には、主に次のような部位があります。

  • 口蓋扁桃:のどの左右にある、いわゆる扁桃腺
  • 舌根:舌の付け根
  • 軟口蓋:口の天井の奥にある柔らかい部分
  • 中咽頭後壁:のどの奥の壁

このうち、口蓋扁桃に発生するがんが「扁桃がん」です。つまり、扁桃がんは中咽頭がんの一種にあたります。 中咽頭は、食べ物を飲み込む働きや言葉の発音にも関係する部位です。がんの進行や治療によって、「飲み込み」や「発声」機能に影響することがあります。

中咽頭がんと扁桃がんが発生する場所を示す図。上咽頭・中咽頭・下咽頭と口蓋扁桃・舌根の位置を解説。

中咽頭の位置と、扁桃がんが発生する口蓋扁桃の位置関係

2. 扁桃がん・中咽頭がんの初期症状とは?

中咽頭がんは、初期には自覚症状がほとんどありませんが、以下の代表的な症状がある場合は注意が必要です。

  • 首のしこり・リンパ節の腫れ
  • 長引くのどの痛みや違和感
  • 食べ物を飲み込むときの痛み
  • 飲み込みにくさ
  • 左右どちらかの耳の痛み
  • 扁桃の腫れや左右差
  • 口の奥からの出血

これらの症状は中咽頭がん以外の病気でも起こりますが、長期間続く場合には注意が必要です。

■ 首のしこりが最初の症状になることも

特に知っておいていただきたいのが、のどには症状がなく、首のしこりから中咽頭がんが見つかる場合があるという点です。 中咽頭がんは、首のリンパ節に転移することがあります。 そのため、のどにできたがん自体は小さくても、首のリンパ節が大きくなり、しこりとして気づかれる場合があります。 また、がんによるリンパ節の腫れは、必ずしも痛みを伴いません。

首のしこりに痛みがなくても注意

「首にしこりがあるけれど、痛くないから大丈夫」とは限りません。特に、原因がはっきりしないしこりが続く場合には、リンパ節の病気や頭頸部のがんなどを含めて確認することが大切です。

3. 首のしこりで見つかる病気とは?

首のしこりがあるからといって、必ずしもがんとは限りません。 感染症や炎症、甲状腺の病気、良性の腫瘤など、さまざまな原因が考えられます。

■ 首のしこりの主な原因

病気 主な特徴
頸部リンパ節炎 風邪や扁桃炎などに伴って腫れる
伝染性単核球症 発熱・のどの痛み・リンパ節の腫れ
甲状腺結節・甲状腺がん 首の前側にしこりができることが多い
唾液腺の病気 耳の下やあごの下が腫れる
粉瘤・脂肪腫 皮膚の下にできる良性のしこり
側頸嚢胞 首の横側にできる袋状の病変
悪性リンパ腫 痛みのないリンパ節の腫れがみられることがある
中咽頭がんなどの頭頸部がん 頸部リンパ節への転移が最初の症状となることがある
その他のがんの転移 肺がんや食道がんなどが首のリンパ節に転移することがある

しこりの位置や硬さ、経過、伴う症状によって考えられる病気は異なります。見た目や触った感覚だけで病名を判断することはできません。

■ こんな首のしこりには注意

成人で次のような特徴がみられる場合は、医療機関での評価が必要です。

  • 原因がはっきりせず、2週間以上続いている
  • 痛みがないのに大きくなっている
  • 硬くて動きにくい
  • 直径1.5cmを超える
  • 長引くのどの痛みや飲み込みにくさを伴う

米国の耳鼻咽喉科診療ガイドラインでは、成人で明らかな感染症がなく、2週間以上持続する首のしこりや、硬い・動きにくい・1.5cmを超えるしこりなどを、悪性腫瘍の可能性も考えて評価すべき所見としています。 ただし、2週間未満でも急速に大きくなる場合は早めの受診が必要です。呼吸が苦しい、唾液も飲み込めないといった症状がある場合は、速やかに救急医療機関を受診してください。

首のしこりの原因となる頸部リンパ節・甲状腺・唾液腺の位置を示した医学イラスト。

首のしこりができる主な場所と、リンパ節・甲状腺・唾液腺の位置関係

4. 扁桃がんと扁桃炎の違いは?

扁桃がんと混同されやすい病気の一つが「扁桃炎」です。 扁桃炎は、細菌やウイルスなどによって扁桃に炎症が起こる病気です。一方、扁桃がんは扁桃の細胞ががん化する病気です。

比較項目 扁桃炎 扁桃がん
原因 細菌・ウイルスなど HPV感染、喫煙・飲酒など
のどの痛み 急に強くなることが多い 痛みがない場合や長引く場合もある
発熱 伴うことがある 初期には目立たないことが多い
扁桃の腫れ 発赤・白苔など 片側の腫れ・腫瘤・潰瘍など
首のリンパ節 炎症に伴って腫れる 転移によって腫れることがある

急に発熱とのどの痛みが出現した場合は、扁桃炎などの感染症が考えられます。 一方で、扁桃の片側だけが大きい、のどの違和感が長期間続く、首のしこりが消えないといった場合には、精密検査を検討する必要があります。 ただし、扁桃の左右差は通常の状態でもみられます。症状だけで扁桃炎と扁桃がんを確実に区別することはできません。

5. 中咽頭がんの原因は?HPVとの関係

中咽頭がんの主な原因として、喫煙、飲酒、そしてヒトパピローマウイルス(HPV)感染が知られています。

■ HPVとは?

HPVは、皮膚や粘膜に感染するウイルスです。 子宮頸がんとの関係が広く知られていますが、中咽頭がんの発症にもHPVが関係していることが明らかになっています。 特に、口蓋扁桃や舌根に発生する中咽頭がんでは、HPVとの関連が重要です。 HPVは主に性的接触などを通じて感染する一般的なウイルスですが、感染した人のほとんどががんになるわけではありません。 多くの感染は自然に排除され、一部で感染が持続することなどが、がんの発生に関係すると考えられています。

■ HPV関連の中咽頭がんは治療成績がよい?

HPV関連の中咽頭がんは、HPV非関連の中咽頭がんに比べて、一般的に治療成績が良好とされています。 ただし、HPVに関連しているからといって、必ず治るわけではありません。実際の治療成績には、がんの進行度、喫煙歴、全身状態などが関係します。 がん組織のHPVとの関連を評価するために、「p16」というタンパク質を調べる検査が行われることがあります。p16はHPV関連がんを判定する際の重要な指標で、がんの進行度を分類する際にも用いられています。

6. 中咽頭がんはどんな検査でわかる?

中咽頭がんが疑われる場合は、耳鼻咽喉科・頭頸部外科で詳しい検査を行います。

■ ① 診察・内視鏡検査

口の中やのどを観察し、首のリンパ節に腫れがないか確認します。 必要に応じて、鼻などから細い内視鏡を挿入し、通常の診察では見えにくい咽頭の奥まで観察します。

■ ② 生検(組織検査)

がんが疑われる病変が見つかった場合は、組織の一部を採取し、顕微鏡で調べます。 がんの確定診断に重要な検査です。

■ ③ CT・MRI・超音波検査など

がんの大きさや周囲への広がり、リンパ節転移の有無などを確認します。必要に応じてPET-CTなどを追加する場合もあります。 首のしこりが主な症状の場合は、超音波検査や穿刺吸引細胞診(細い針で細胞を採取して調べる検査)が診断に役立つこともあります。

首のしこりがある場合、何科を受診する?

首のしこりや扁桃の異常、長引くのどの症状がある場合は、耳鼻咽喉科での診察や消化器内科での内視鏡検査が基本です。必要に応じて頭頸部外科のある専門病院で、内視鏡検査・画像検査・組織検査などを行います。

7. 扁桃がん・中咽頭がんの治療方法

中咽頭がんの治療には、主に手術、放射線治療、薬物療法があります。 がんの進行度や発生した場所、HPVとの関連、全身状態などを考慮して治療方針を決定します。

■ ① 手術

がんを切除する治療です。 病変の大きさや位置によっては、口から手術器具を挿入して切除する方法もあります。 頸部リンパ節への転移がある場合には、リンパ節を切除する手術を行うこともあります。

■ ② 放射線治療

放射線を照射してがん細胞を攻撃する治療です。 中咽頭がんでは重要な治療選択肢の一つで、進行度によっては抗がん剤と放射線を組み合わせた「化学放射線療法」が行われます。

■ ③ 薬物療法

抗がん剤や免疫チェックポイント阻害薬などを使用する治療です。 放射線治療との併用や、再発・転移した中咽頭がんなどで検討されます。使用する薬剤は病状や治療目的によって異なります。

治療では、飲み込みや発声の機能を守ることも重要

中咽頭は、食べ物を飲み込んだり、言葉を発音したりするために重要な場所です。そのため、がんの治療効果だけでなく、治療後の嚥下機能や発声機能、生活の質(QOL)をできるだけ保つことも重視して治療方法を検討します。

中咽頭がんの治療方法である手術・放射線治療・薬物療法の違いを示した医療イラスト。

中咽頭がんの主な治療方法。進行度や病変の位置などに応じて治療を選択します。

8. 中咽頭がんと食道がんの関係|胃カメラも重要?

中咽頭がんと食道がんには、共通するリスク要因があります。 特に、喫煙や飲酒は、中咽頭がんだけでなく、食道がんなどの発症にも関係しています。 そのため、中咽頭がんの患者さんでは、別の臓器にもがんが発生する「重複がん」に注意が必要です。 こうした背景から、中咽頭がんと診断された場合、特に喫煙や飲酒に関連したがんが疑われる方では、食道がんなどの重複がんを確認する目的で胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)が検討されます。 検査の必要性や時期は、HPVとの関連や喫煙・飲酒歴、患者さんの全身状態などを踏まえて判断します。

■ 胃カメラで咽頭がんは発見できる?

胃カメラは本来、食道・胃・十二指腸を観察する検査ですが、内視鏡の挿入時などに咽頭の一部を観察できる場合があります。 実際に、胃カメラの際に咽頭の異常が偶然見つかることもあります。 ただし、通常の胃カメラだけで中咽頭全体を十分に観察できるわけではありません。 のどの症状や首のしこりが気になる場合は、胃カメラだけで判断せず、耳鼻咽喉科で診察を受けることが大切です。 当院の胃カメラについては、平野区の胃カメラ検査・検査の流れについて詳しく見るをご覧ください。

9. 扁桃がん・中咽頭がんについてよくある質問(FAQ)

Q 扁桃がんは自分で見てわかりますか?

A

扁桃に明らかな腫れや腫瘤がある場合は、鏡などで気づくこともあります。ただし、舌の付け根など見えにくい場所にがんができることもあり、見た目に異常がないからといって否定はできません。
Q 首のしこりが痛くなければ大丈夫ですか?

A

痛みがなくても、悪性リンパ腫や咽頭がんのリンパ節転移などが隠れている場合があります。特に、原因がはっきりしないしこりが2週間以上続く場合や、大きくなっている場合には耳鼻咽喉科での診察をおすすめします。
Q のどの痛みが何週間続いたら受診すべきですか?

A

風邪や扁桃炎によるのどの痛みは、比較的短期間で改善することが多いです。一方、2週間程度たっても改善しない場合や、症状が悪化する場合、首のしこりや飲み込みにくさを伴う場合には、耳鼻咽喉科で原因を確認しましょう。
Q HPVに感染すると必ず中咽頭がんになりますか?

A

いいえ。HPV感染は珍しいものではなく、感染した人のほとんどが中咽頭がんになるわけではありません。一部で感染が持続することなどが、がんの発生に関係すると考えられています。
Q 胃カメラで中咽頭がんは発見できますか?

A

胃カメラの際に咽頭の一部を観察でき、異常が見つかる場合もあります。ただし、中咽頭全体を十分に評価できるわけではないため、咽頭がんが疑われる場合は耳鼻咽喉科での専門的な検査が必要です。
Q 中咽頭がんを治療すると、声が出なくなるのですか?

A

中咽頭がんの治療によって、必ずしも声が出なくなるわけではありません。 声を出す声帯は、中咽頭より下にある「喉頭」という部分に存在します。そのため、喉頭を温存できる場合には、声を出す機能を維持できることが多いです。 ただし、手術の範囲によっては言葉がはっきり発音しにくくなったり、治療に伴って声がかすれたりする場合があります。また、がんが広範囲に進行し、喉頭まで切除する必要がある場合には、通常の声を失うこともあります。
Q 中咽頭がんの治療後、日常生活に支障が出ることはありますか?

A

治療内容によっては、次のような影響が生じる場合があります。

  • 飲み込みにくさ:食事が飲み込みにくくなったり、むせやすくなったりする
  • 発音の変化:言葉が聞き取りにくくなる
  • 味覚障害:食べ物の味を感じにくくなる
  • 口の乾燥:放射線治療などによって唾液が減少する
  • 首や肩の動かしにくさ:頸部リンパ節の手術後に生じることがある

これらの症状は時間とともに改善する場合もありますが、長期間続くこともあります。生活の質(QOL)を保つため、必要に応じて飲み込みの訓練や発声のリハビリテーションなどを行います。

10. まとめ|首のしこりや長引くのどの症状に注意

扁桃がん・中咽頭がんは、初期には自覚症状が乏しい場合があります。 特に覚えておいていただきたいのは、次の3つです。

  • 中咽頭がんは、のどの痛みがなくても首のしこりから見つかることがある
  • 首のしこりの原因はさまざまで、がん以外の病気も多い
  • 首のしこりやのどの症状が長引く場合は、耳鼻咽喉科での確認が重要

また、中咽頭がんと食道がんには共通するリスク要因があり、胃カメラによる重複がんの確認が重要となる場合があります。 大阪市平野区のやまおか内科クリニックでは、胃カメラ・大腸カメラなどの消化器内視鏡検査に対応しています。 平野区を中心に、東住吉区・生野区などから胃カメラをご希望の方もご相談ください。 なお、首のしこりや咽頭の病変が疑われる場合には、耳鼻咽喉科・頭頸部外科での専門的な評価が必要です。

参考文献

1. 国立がん研究センター がん情報サービス「中咽頭がん」 https://ganjoho.jp/public/cancer/mesopharynx/index.html

2. 国立がん研究センター がん情報サービス「中咽頭がん 治療」 https://ganjoho.jp/public/cancer/mesopharynx/treatment.html

3. 日本頭頸部癌学会 編.頭頸部癌診療ガイドライン 2025年版.金原出版,2025. 出版社公式情報

4. Pynnonen MA, et al. Clinical Practice Guideline: Evaluation of the Neck Mass in Adults. Otolaryngology–Head and Neck Surgery. 2017;157(2_suppl):S1–S30. DOI: 10.1177/0194599817722550

5. 国立がん研究センター がん情報サービス「中咽頭がん 予防・検診」 https://ganjoho.jp/public/cancer/mesopharynx/prevention_screening.html

この記事を書いた人

やまおか内科クリニック

院長 山岡 祥

大阪大学医学部卒業

保有資格

日本内科学会 総合内科専門医 日本消化器病学会 消化器病専門医 日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医 日本糖尿病協会 登録医

大阪市平野区西脇にて、一般内科・消化器内科・糖尿病診療、胃カメラ・大腸カメラなどの診療を行っています。消化器病専門医・消化器内視鏡専門医として、消化管疾患の早期発見や、専門医療機関との連携を大切にしています。医学的根拠に基づき、患者さんにわかりやすい医療情報をお届けします。

大阪市平野区で胃カメラをご検討の方へ

やまおか内科クリニックでは、消化器病専門医・消化器内視鏡専門医による胃カメラ検査を行っています。鎮静剤を使用した検査や経鼻内視鏡にも対応しています。

胃カメラのご案内・WEB予約について → 消化器内科について詳しく見る →

大阪市平野区西脇|東住吉区・生野区からもご来院いただけます。

※首のしこり・扁桃の異常・咽頭がんが疑われる場合は、耳鼻咽喉科・頭頸部外科での専門的な診察が必要です。

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