「肝機能が正常だから大丈夫」と思っていませんか?
B型肝炎・C型肝炎は日本では近年減少傾向ですが依然感染や治療している方が少なくない病気です。肝炎初期にはほとんど症状がなく、健康診断で肝機能(AST・ALT)が正常でも感染している場合があります。
肝炎ウイルスに気付かないまま長期間経過すると、慢性的な肝炎が進行し、肝硬変や肝がんにつながることがあります。一方で、現在は早期発見・早期治療により重症化予防が可能です。
1. 日本のB型・C型肝炎の現状
日本では、医療の進歩やワクチンの普及により肝炎患者は減少傾向にあります。ただし、現在も感染に気付かず生活している方がおり、過去に検査を受けたかどうかを確認することが大切です。

国内の持続感染者数は、B型・C型とも減少しています。特にC型肝炎では、抗ウイルス治療の進歩により、2000年の約169~219万人から2020年には約19~48万人まで減少したと推計されています。なお、各数値は全国調査や疫学データを基にした推計範囲であり、実際に医療機関で治療中の患者数とは異なります。
出典:Tanaka J, et al. Lancet Reg Health West Pac. 2022;22:100428、Tanaka J, et al. Hepatol Res. 2026. DOI: 10.1111/hepr.70174、厚生労働省肝炎等克服政策研究事業資料。
◆ B型肝炎
国内には現在も約100万人前後のB型肝炎ウイルス(HBV)感染者がいると推定されています。
1986年に母子感染予防事業が始まり、2016年には乳児へのB型肝炎ワクチンが定期接種となったことで、若い世代の感染率は大きく低下しました。しかし、現在でも新たな感染はみられ、成人では性的接触による感染が主な感染経路となっています。
◆ C型肝炎
C型肝炎は、以前は輸血や医療行為による感染が多くみられました。近年は献血時の検査体制や感染対策の充実、さらに飲み薬による治療(DAA)が普及したことで、新規感染者・患者数とも大きく減少しています。
現在では、多くの患者さんが治癒を目指せる時代となりました。
◆ 世界ではまだ身近な感染症です
日本では肝炎患者は減少していますが、世界全体では依然として重要な感染症です。特に、次のような国・地域ではB型肝炎の感染率が日本より高い場合があります。
B型肝炎の感染率が比較的高い地域の例
- 中国、モンゴル
- ベトナム、フィリピン、インドネシア
- カンボジア、ラオス、ミャンマー
- サハラ以南のアフリカ諸国
海外旅行や海外勤務、国際交流が増えた現在では、肝炎を「昔の病気」と考えるのではなく、必要な方は一度検査を受けることが大切です。
2. B型肝炎とC型肝炎の違い
| 比較項目 | B型肝炎 | C型肝炎 |
|---|---|---|
| 原因 | B型肝炎ウイルス(HBV) | C型肝炎ウイルス(HCV) |
| ワクチン | あり | なし |
| 主な感染経路 | 母子感染・性的接触・血液感染 | 主に血液感染 |
| 慢性化した場合 | 肝硬変・肝がんの原因となることがある | 肝硬変・肝がんの原因となることがある |
| 治療の考え方 | ウイルスの増殖を抑える治療が可能 | 多くの方でウイルス排除・治癒が期待できる |
3. 肝炎は症状がほとんどなく、肝機能が正常なこともあります
B型・C型肝炎は「沈黙の病気」と呼ばれることがあります。感染していても、痛み・発熱・倦怠感などの症状が全くないまま、数十年経過することも珍しくありません。
「体調が良いから大丈夫」ではなく、「これまで一度でも肝炎ウイルス検査を受けたことがあるか」が重要です。
◆ 肝機能が正常でも肝炎は否定できません
健康診断でAST、ALT、γ-GTPが正常だったとしても、B型・C型肝炎を完全に否定することはできません。慢性肝炎でも、炎症が落ち着いている時期には肝機能が正常になることがあります。
また、肝機能異常がみられた場合も、その原因は肝炎ウイルスだけではありません。
肝機能異常の主な原因
- 脂肪肝
- アルコール性肝障害
- 薬剤性肝障害
- 自己免疫性肝疾患
- B型・C型肝炎
肝機能異常が続く場合には、数値だけを経過観察するのではなく、原因を調べることが重要です。
4. 肝炎ウイルス検査では何を調べるの?
◆ HBs抗原
HBs抗原は、B型肝炎ウイルスに現在感染している可能性があるかを調べる検査です。陽性だからといって、すぐに肝硬変や肝がんというわけではありません。追加検査を行い、ウイルスの状態や肝臓への影響を詳しく評価します。
◆ HCV抗体
HCV抗体は、C型肝炎ウイルスに感染したことがあるかを調べる検査です。抗体陽性の場合でも、現在ウイルスが存在するとは限りません。そのため、HCV-RNA検査を追加し、現在も感染しているかを確認します。
検査結果の基本的な見方
- HBs抗原陽性:B型肝炎ウイルスの感染状態を追加検査で確認します。
- HCV抗体陽性:HCV-RNA検査で、現在ウイルスが存在するかを確認します。
5. 肝炎検査で陽性だった場合の対応と治療
検査で陽性となっても、慌てる必要はありません。陽性という結果だけで病気の進行度は決まらないため、まずは肝臓の状態を詳しく評価します。
陽性後に行う主な評価
- 追加の血液検査
- 腹部超音波(腹部エコー)検査
- 血小板数の確認
- 肝線維化リスクの評価(FIB-4 indexなど)
必要に応じて肝臓専門医と連携し、適切な治療につなげます。早期に発見できれば、肝硬変や肝がんへの進行を予防できる可能性が高くなります。

◆ B型肝炎の治療
B型肝炎では、ウイルスの増殖を抑える飲み薬(核酸アナログ製剤)によって肝炎の進行を抑える治療が行われます。適切に治療・経過観察を行うことで、肝硬変や肝がんのリスクを減らすことが期待できます。
◆ C型肝炎の治療
現在のC型肝炎治療は飲み薬が中心です。以前のような長期間の注射治療ではなく、多くの患者さんで短期間の内服によりウイルス排除(治癒)が期待できます。
6. このような方は一度検査をおすすめします
肝炎ウイルス検査を検討したい方
- ✓一度も肝炎検査を受けた記憶がない
- ✓健康診断で肝機能異常を指摘された
- ✓家族にB型肝炎の方がいる
- ✓過去に輸血を受けたことがある
- ✓手術歴がある
- ✓医療従事者である
- ✓海外滞在歴・海外渡航歴がある
- ✓妊娠を予定している、または妊娠中である
7. よくあるご質問
Q.
肝機能が正常なら検査は不要ですか?
A.
いいえ。AST・ALTが正常でも、B型・C型肝炎を完全に否定することはできません。過去に一度も検査を受けた記憶がない方は、検査をご検討ください。
Q.
B型肝炎ワクチンを接種していれば検査は不要ですか?
A.
ワクチンは感染予防に有効ですが、接種前に感染していた場合は別です。接種歴や過去の検査歴に応じて、必要な検査を判断します。
Q.
HBs抗原陽性と言われました。すぐ肝硬変ですか?
A.
いいえ。陽性という結果だけで肝硬変と決まるわけではありません。追加の血液検査や腹部エコーなどで、現在の病状を詳しく評価します。
Q.
HCV抗体陽性でした。治らない病気ですか?
A.
現在は飲み薬による治療で、多くの患者さんが治癒を目指せます。まずはHCV-RNA検査で、現在もウイルスが存在するかを確認することが大切です。
8. 当院で行っている肝臓の検査・診療
当院では、B型・C型肝炎だけでなく、脂肪肝やその他の肝疾患も含めて総合的に診療しています。
当院で対応できること
- ✓B型・C型肝炎ウイルス検査
- ✓肝機能検査
- ✓腹部超音波(腹部エコー)検査
- ✓肝線維化リスクの評価(FIB-4 indexなど)
- ✓脂肪肝・アルコール性肝障害などの原因検索
- ✓必要に応じた肝臓専門医療機関へのご紹介
健康診断で肝機能異常を指摘された方、肝炎ウイルス検査を受けたことがない方、HBs抗原陽性・HCV抗体陽性と言われた方もご相談ください。
まとめ
B型・C型肝炎は、症状がないまま進行することがある感染症です。現在は検査によって早期発見が可能となり、適切な治療や経過観察により重症化を防げる時代になっています。
- 肝機能が正常でも、感染を完全に否定できるわけではありません。
- B型肝炎には予防ワクチンがあります。
- C型肝炎は飲み薬による治癒が期待できます。
- 一度も検査を受けたことがない方は、肝炎ウイルス検査をご検討ください。
健康診断で肝機能異常を指摘された方や、肝炎について気になることがある方は、どうぞお気軽にやまおか内科クリニックへご相談ください。
肝機能異常・肝炎ウイルス検査のご相談、ご予約について

【略歴・専門医資格】
・大阪大学医学部医学科 卒業
・日本内科学会認定 総合内科専門医
・日本消化器病学会認定 消化器病専門医
・日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医
地域医療の専門医として、丁寧な対話と安全第一の検査・治療を提供しています。